恐山いた男の独り言
「武士道と死への覚悟を考えさせられた!」
最近、いた男の大家さんから聞いた話なんだけど、大家さんの知り合いの94歳の方が亡くなられたんだよ。大家さんが言うには、その方は家業をしながら執筆の仕事もして、本も出版していたし、全国的な文学賞も受賞した経歴の方なんだよね。その方が病気になって余命を告げられて、選択した治療方法が延命措置は一切しないという方法だったんだよね。94歳と言っても、まだまだ活躍していたので、周囲は驚いたと思うけど、本人の意思が固くて周囲も納得したと言うんだよね。
いた男が不思議に思っていたのは、高齢だからと言っても、そんなに簡単に自分から自分の死を選択できるかということだよね。葬儀が終わってしばらくして、大家さんが線香を上げに行ったとき、遺族の方々と話して分かったことは、その方は、文学者だから、三島由紀夫に傾倒していたらしくて、三島由紀夫の「盾の会」のメンバーだったと言うんだよね。
三島由紀夫が割腹自殺した時に、自分も東京へ行って割腹して死にたいと言っていたと言うんだよ。三島由紀夫とか割腹自殺を賛美するわけではないけど、三島由紀夫の思想の根底に流れていたのは、「武士道」なんだよね。「武士」という職業は、何時戦場で死ぬか分からない人達の「道」を説いた思想だから、常に死と向き合う精神構造なんだよね。だから、大家さんの知人の方も、武士道の精神で、常に死というものを見つめながら94歳まで生きてこられたんだと思うんだよね。
いた男の様な、凡人にはなかなか出来ないことだよ。ある週刊誌で、活躍する女性自衛官の特集があって、その女性自衛官の方が、職業柄常に死と直面しているので、「家族には申し訳ないが、職務遂行のためなら死は恐れない」と言っておられたけど、女性ながらその覚悟も素晴らしいと思うんだよね。いた男も、恐山で修行しているから、死というものを見つめているつもりだけど、自らの意志で自らの死を選択するということって、思っているよりはるかに難しいよね。いた男、「未だ煩悩捨てきれず!」だよ。