恐山いた男の独り言
オーストラリアのビーチで足をサメに噛まれて海に引き込まれた奥さんを助けるために、3メートルもあるサメに挑みかかってサメを殴り続けた結果、サメを撃退した旦那さんのニュース出ていたよね。幸い、奥さんは足を2か所サメに噛まれただけで、一命は取り留めたんだけど、傍でその様子を見ていたサーファーは、旦那さんの行為を、「英雄的行為」だと絶賛しているというんだよね。確かに3メートルもあるサメに素手で挑みかかるという行為自体が並大抵の勇気でなければ出来ないことだけど、奥さんを助けるために夢中だったんだよね。それだけ奥さんを愛していたということかな?人間って緊急事態になると意外と勇気が湧くというか、「火事場のバカ力」というか、秘められた底力が出るものなのかもしれないよね。いた男も「火事場のバカ力」の経験があるんだよね。仙台の大学に居た頃、研究室のコンパの後、2次会へ行くために仙台の目抜き通りの一番町を歩いていたのさ。その時、研究室のメンバーで、サングラスをかけてちょっと堅気離れした大学院生がいて、正面から歩いてきた二人のチンピラに目線をやったら、「眼つけた!」と言われ、いちゃもんをつけられて、二人がかりで殴られたことがあったんだよね。周りで見ていた研究室の仲間はあっけにとられて最初は傍観していたんだけど、さすがに二人がかりでやられると厳しいと思って、いた男が大学院生を助けるために加勢に入ったんだよね。いた男も、殴り合いなんかしたことないし、喧嘩はめっぽう弱いしで、最初は躊躇したんだけど、「このままでは大学院生がやられるから何とかしないと!」と思うと、自然に義務感みたいなものが湧いてきて、恐怖心とか殴られた時の痛さなど忘れて、ただ無心に「突撃」する気分になったんだよね。二人のうち一人を引き離して、大学院生の負担を減らすため、一人にただ絡みついているだけの「ぶざま」な状態だったんだけど、不思議と冷静で、殴られないためのポジション取りとか、チンピラの自由を奪うための絡み方など工夫して対応していたら、そのうち通行人の人が「警察が来たぞ!」と叫んでくれて、チンピラ二人は前科があるらしく、「ヤバイ」と言って駆け去ったんだよね。その時に驚いたのは、人間って、いた男のような弱虫でも、いざとなると「火事場のバカ力」が出て、恐怖を乗り越えて冷静に戦うことが出来てしまうんだということだったんだよね。3メートルもあるサメに挑みかかれた男性も、妻を救わなければという強い気持ちが男性に勇気を与えたんだと思うよ。人間って、意外なところに意外な力が秘められているんだよね。